かつてサラリーマンであれば、毎月決まった金額の給料と定期昇給が当たり前でした。今やそんなモデルは存在しません。万が一「日本の国際競争力がついてきたら、昔のようになるかも」なんてことを考えている方がいたら、それ本当にマズイです。あるいは「あと数年で定年だから逃げきっちゃお!セーフ!」と思っている方も危険です。「人生100年時代」という超長寿社会があなたを追っかけてきて、逃げ切りを許しません。
「働き方改革」が叫ばれています。しかし、当然それに呼応した企業側の「働かせ方改革」もあるはず。いかにしてコスト・パフォーマンスの高い働かせ方の模索を、採用という原材料の仕入れから始まって、研修という投資、人員の適正配置という生産、さらには「もう雑巾絞りきっちゃったなか」という人材に対しては早期退職という固定費削減プログラムを導入するなどして日々やっているわけです。
なのでサラリーマンも「部署」という単位ではなく「自分」という個の単位で、ちゃんと戦略的に考え・行動していかなればらないのです。「稼ぐ力をつける」は、自営業者やスキル・能力を武器に働く個人だけではなくあらゆる人の課題です。
ちなみに主婦の方も例外ではありません。旦那の給料の伸び悩みと子供の教育費などのコストアップを考え併せると、何からの追加収入を得ていかないと「求める生活」どころか「せめてこの位は・・の生活」を手に入れるのさえ危うくなってきます。その時「そうだ!掃除好きだからクリーニング・レディとして稼ぐぞ!」と思っても、そこにはあなたより時給が安くてよく働く外国の方がいたります。
なので、「稼ぐ力をつける」ことは、就業形態、社会的属性に関わらず誰でも必要、もはやnice to have(あったらいいな)ではなくneed to have(絶対必要)なんですね。ちなみに、アメリカ人の勤続年数は平均4年半だと言われています。私の友人のサラリーマンはみんな(再)就職祝いの席から「次の就職先」を考えています。
稼ぐ力の源泉は
ひとことで言うと稼ぐ力の源となるのは「人との違い」です。
人との違いを明確に打ち出すことができれば、それは価値になり、価格になります。
東京に、ある床屋さんがあります。
美容院とかヘア・サロンとかではなく、いわゆる「ザ・床屋」のような昔ながらの佇まいの普通の床屋さんです。しかし、その床屋さん、新規のお客さんが取れないほど予約でいっぱいなのです。しかも日本全国からやってきます。最寄駅から徒歩15分という立地は決して便利ではありません。一体その秘密は何なのでしょう?
もちろん、床屋さんとしての基本サービス、つまりカットや洗髪のクオリティが高いことは言うまでもありません。しかし、そのような基本サービスが高品質である床屋さんは山のようにいるはず。高品質は違いにはなりにくいですね。
実は、革のつなぎで大型バイク、ハーレーに乗るのが趣味であるゴツい店主がやってくれる「耳の中のうぶ毛剃り」です。しかも、細長い刃渡り15センチほどの日本カミソリを使ってやるのです。実際にカミソリをあてる前の「シャッシャッシャッシャッ」と革ベルトのようなもので研ぐ音を耳元で聞いてからの耳の中のうぶ毛剃りはかなりの非日常体験です。
そしてこの「耳の中のうぶ毛を日本カミソリで剃る」という「他とは違うサービス」を「とても細かい手作業が得意そうには見えない店主のルックス(失礼!)から来る意外性」という味付けで一層価値を高めているのです。一旦このサービスを体験した顧客の多くはリピーターとなり、さらには比較的短期間でファンになっているのです。
固定客は新規集客コストがかからないので、収益的にもとても有利。違いがもたらす高収益性を「店構えは普通だけど中にはいると最新の機器が満載」という機能的・心理的な演出?へ投資することも忘れていません。これが「違い」を「価値」に換え「高収益化」したメカニズムです。
どこに違いを出すか
「違い」があっても違いを違いと認識させ、さらにそれが価値があることを自分以外に分かってもらえない限り、価値にはなり得ません。ではそれをどこに出していくかです。
ロサンゼルスにいると、日本企業の方とお会いする機会が比較的多くあります。
ビジネスミーティングや、単に日本の知人から「〇〇さんが今度行くから、ちょっと会ってくれない?」という依頼やらいろいろです。
企業の社長や役員の方が来るとき、一人で来られる方はまずいません。みなさん、部下の方を連れて来られます。仕事のスキルや能力は分かりませんが、連れて来られる方の英語力の高さにはびっくりすることがあります。
社長や役員の方は英語がそこまで得意でないので、英語が堪能な社員をお供として連れてきているわけです。
英語の必要性の是非はともかくとして、ここには「求める人に足りないものを提供すると有り難がられる」という原則があります。
つまりあなたの「違い」が「それを持ってない人」「それが供給されていない市場」つまり「足りないところ」に対して「それを埋めるもの」であればより高い価値になるわけです。その場所はどこかを探すことが基本です。
「違い」の分かりやすい見せ方
簡単に言うと「〇〇と言えば〇〇さん」「〇〇と言えば〇〇商店」を分かりやすく見せることです。しかしだからと言って「笑顔だけは負けないレストランと言えば」とか「社員全員が大学院修了のホームセンターと言えば」とかはどうなんでしょう。悪くはないですが、どうしてもそこに行きたい・買いたいと思わせる決め手にはなりにくいですよね。やはり、そこは受け手側にとっての分かりやすいメリットに落とし込む必要があります。
「価格」は最も分かりやすいメリットのひとつです。しかし「安さ」を売りにすべきと言っているのではありません。「1時間あたりの単価」が普通である業界に1分あたり10分あたりの「細切れ時間」を設定することは、違いを見せる方法の一つです。あるいは逆に「1日単位」など単位を拡大にする方法もありだと思います。
本をキロ単位で売る古本屋さんの話を聞いたことがありますが、品揃えが他に見劣りしなければ行ってみたくなりますよね。
「違い」を「分かりやすいメリット」とすることで違いが際立ちます。
「違い」の価値を高める
さらにあなたの「違い」は「最初は珍しかった商品特性」と同じように陳腐化していきます。多くの人ができるようになったら、それはもはや「違い」ではありませんね。「違い」は常にそのリスクに晒されていることを認識しつつ付き合う必要があります。
その付き合い方は2つです。
一つは、「違い」を徹底的に磨き込み先鋭化すること。誰かが追っかけてきても追いつけない高みに行くということ。常に技の高みを追求する職人的な生き方と言えるかもしれません。
もう一つは、いくつかの違いを掛け合わせることで自分だけの独自領域を作ることです。これが実現できれば競争力が高まり更に価値が上がります。もちろん、それに伴って価格を上げることができるわけです。
友人に日本語、英語ともに堪能な元ジャーナリストがいます。現在はいくつかの分野を専門にした弁護士として活躍しています。プロとしてやっていた程のジャーナリスティックな視点でビジネス動向が見られ、さらにその分野の法律が分かるので、もちろん他の弁護士とはひと味もふた味も違うわけです。その人がビジネスで成功していることは言うまでもありません。
違いを価値として認識することで「どうやって高めるべきか」という発想が生まれます。
まとめ
とにもかくにも、必要としている人に対して、必要なものを提供すること。これ商売の基本中の基本です。でもこれでは最低賃金の働き方です。同じ必要なものでも、他の人が真似できないような「違い」を方法や形態、システムという具体的な受け手のベネフィットに落とし込んで提供することで「指名させる人」「追加料金や追加の時間をかけてでも欲しいと思われるサービス」になります。こうなって初めて「稼ぐ」という領域に入るのだと思っています。そしてこれこそが「稼ぐ力」メカニズムの大原則なのです。
さらに1時間あたりに1つの価値しか提供できない「単位時間単一価値」の稼ぎ方は体力との勝負、時間との勝負です。ここで勝負していたら、かならず体力の限界や24時間という1日の時間の限界には勝てないわけです。
この辺りを頭に入れつつ、体力や時間の限界に制限されない違いを価値としていくのが「稼ぎ続ける働き方」であり人生100年時代のの働くスタイルではないかと考える次第です。
ではまた