中小企業の経営者と話していると、こんな言葉をよく聞きます。
「うちは口コミで来てくれるお客さんが多いので、特に集客はしていません」
「紹介で十分回っているので、広告は要らないと思っています」
立派なことだと思います。口コミや紹介で顧客が来てくれるのは、商品やサービスの質が高い証拠であり、長年の信頼の積み上げの結果です。
ただ、私は広告会社で30年、独立して9年、これまで100社以上の中小企業を見てきた経験から、この状態には3つの見えにくいリスクが潜んでいることをお伝えしたいと思います。
今日は、口コミ・紹介だけで集客している会社が、知っておくべき3つのリスクの話です。
リスク①:価格交渉力が育たない
口コミや紹介で来た顧客は、ある意味、価格について深く考えずに来ています。
なぜなら、彼らが信用しているのは、紹介してくれた知人や口コミの発信者であって、御社の価格そのものを比較検討して納得したわけではないからです。
「○○さんが薦めてくれたから」「ネットで評判が良かったから」という理由で来てくれた顧客は、御社の価値を自分の言葉で言語化できていないことが多い。
すると何が起きるか。
値上げの局面で、根拠を示せないのです。
「うちのサービスは、競合と比較してここが優れているから、この価格で提供しています」と説明できる会社は、値上げに耐えられます。しかし、口コミだけで集客している会社は、自社の競合優位を社長自身が言語化していないことが多いため、値上げのときに「なんとなく安く設定し続ける」状態が続きます。
10年経つと、競合との価格差が広がり、利益率が圧迫されているのに、それを変えられない、という会社になっていきます。
リスク②:顧客の流出が始まると、止められない
口コミ・紹介で来る顧客には、見えないネットワーク構造があります。
つまり、ある一人の顧客が紹介者となって、そこから3人、5人と顧客が広がっていく構造です。これは集客の効率としては素晴らしい。
しかし、逆向きに動くこともあります。
紹介者となっていた顧客が離脱したとき、その人が紹介した3人、5人も連鎖的に離脱していくことがあります。ネットワークは集める時も、失う時も、同じ構造で動くからです。
私が支援した中小企業で、こういうケースがありました。15年取引していた重要顧客が、社内体制の変化で離脱しました。その顧客が「とても良い会社だよ」と紹介してくれていた取引先5社のうち、3社が半年以内に離脱したのです。
この時、社長は初めて気づきました。「うちのお客さんの多くは、あの人の信用で来てくれていたんだ」と。
口コミ・紹介で集客が回っている会社は、自社の集客の蛇口が、実は他人の手の中にあるということを、もっと意識する必要があります。
リスク③:集客の量を、自分でコントロールできない
これが、3つの中でもっとも重要なリスクです。
口コミと紹介は、他人の善意とタイミングに依存しています。自社が「今月は新規顧客を10件取りたい」と思っても、口コミだけでは、それを実現する手段がありません。
景気が良い時、紹介してくれる人がたまたま多い時は、集客が活発になります。逆に、景気が悪い時、紹介者が忙しい時は、集客が急に止まります。
つまり、会社の成長スピードを、自社の意思で決められない状態になります。
これは、経営判断にも影響します。新しい設備投資をしたい、人を採用したい、新店舗を出したい、というとき、「来期の売上をいくらにできるか」を社長自身が見通せない。だから、保守的な判断しかできなくなる。
口コミだけで回っている会社が、ある規模で成長が止まってしまうのは、商品の質の問題ではなく、集客の蛇口を自社で開けられないことが原因です。
「口コミで十分」の裏にある、本当の問題
ここまで3つのリスクを挙げてきましたが、根本にある問題は1つです。
それは、自社の本当の価値を、社長自身が言葉にできていないということです。
口コミ・紹介で来る顧客は、御社の価値を勝手に伝えてくれます。だから社長は、自分でそれを言語化する機会がない。
しかし、価格交渉、顧客流出、新規開拓のどの局面でも、必要なのは「自社の競合優位を、自分の言葉で説明する力」です。これを社長が持っているかどうかで、会社の長期的な強さは決まります。
この「自分の言葉で説明する力」は、戦略を立てるときにも、施策を実行するときにも、同じように必要です。この点については、関連記事としてこちらももあわせてお読みください。
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口コミは、宝物のような財産です。しかし、それに頼り切るのではなく、口コミが止まった時にも自社で集客できる仕組みを、平行して育てておく必要があります。
「口コミ依存」を確認する3つの質問
最後に、自社が口コミに過度に依存していないかを確認する、3つの質問を残します。
1. いまの顧客のうち、口コミ・紹介ではなく、自社の発信を見て来た顧客は、何割いますか?
これが3割を切っていれば、口コミ依存が高い状態です。
2. 自社の価値を、競合と比較して3つ挙げられますか?
これが具体的に答えられないなら、価格交渉力が育っていないサインです。
3. 来年、紹介がゼロになった場合、御社の売上は何割減りますか?
これが5割以上と感じるなら、集客の蛇口が他人の手の中にあります。
この3つの質問に向き合うことが、口コミ依存から抜け出す最初の一歩です。
まとめ
口コミや紹介で集客できているのは、御社の積み上げの結果であり、誇るべきことです。しかし、それだけに頼っていると、知らないうちに3つのリスクを抱え込みます。
- 価格交渉力が育たない
- 流出が始まると止められない
- 集客の量を自分でコントロールできない
これらを補うために、自社の言葉で価値を伝える発信と、自社で開けられる集客の蛇口を、口コミと並行して育てていくことをお勧めします。
LAコンサルティングでは、中小企業のマーケティング戦略から実行までを伴走しています。「うちは口コミで十分か、それとも別の集客も必要か」を整理する段階の相談も歓迎です。30分の無料相談で、現状を一緒に整理しましょう。
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